傀儡音楽

かいらいおんがく

君の友達/Berryz工房

あぁ だめだ
どうして君は いつもそんなに積極的なの
嫌いじゃないよ 良い奴だよ
頼りになるし 飽きないし
でも 俺が好きなのは 君じゃないんだ
気を察してほしいなぁ
俺が必死な思いで好きな娘にした質問も
なんでいつも 君が答えるの?
あぁ どうせなら 君のような根性がほしいよぉ

せつない。せつないねぇ。こういう感じ、オジサンの人生には二度と訪れないんだろうなぁ。

上に引用した菅谷梨沙子さんのセリフが最高に良い。ハロプロ楽曲の、途中でセリフが入る曲の中でもトップクラスに好き。この性急でつっかえるような感じ。素晴らしい。ハロプロの曲で「俺」って一人称が出てくる曲ほかにあったっけ?

主人公の男の子がヘタレ、って単純に言えばそういう曲なんだけど、主人公の男の子に言い寄る女の子の気持ちを考えると最高にせつない。主人公ももちろんせつない。主人公の男はA子ちゃんが好きなんだけど、B子ちゃんに言い寄られて自分の恋路を邪魔されてる気持ちになってるわけだ。

たぶん……このB子ちゃんはブスなんだ。場合によっちゃ太ってるかもしれない。少なくともA子ちゃんの方が「見た目がアイドルに近い」という観点で見て可愛らしいはずだ。主人公はB子ちゃんを「いい奴で、頼りになるし、飽きない」とほめる。見た目以外の部分でいいところを見つけようと必死だ。否定はしたくない。でも、自分が好きなのは見た目的に可愛いA子ちゃんだ。
若い頃って見た目の可愛さに惑わされるからね。もっと言っちゃうと「ブスとは付き合いたくない」。自分の恋人を装飾品のひとつとして考えてしまって「ブスと歩くのは恥ずかしい」って思っちゃう年頃なんだ。可愛い子と付き合いたい。いっつも一緒に過ごしてる相手は可愛くないから、恋人としては考えられない。「友達としてしか考えられない」「妹みたいな存在」はつまり「だってブスなんだもん」なのだ。幼稚で浅はかで自分というものがわかってなくて、そういう見方しかできない。平たく言えば童貞をこじらせている状態だ。

でも主人公は気がついていない。一方的に片想いをしていて、邪魔されずに話したいと願っているA子ちゃんと、実は今までほとんどまともな人間関係を築いていないことを。自分の問いかけにA子ちゃんがなんて返事をするのか、どんな考え方をするのか。一緒に過ごして気楽で楽しいか、それとも常に背伸びをして気をはってなければ続かない相手なのか、何も知らない。ただ見た目が好きなだけ。一人の人間として相対したことがないのに、どんな人かも知らないのに、遠い場所から片想いしてる。それが恋。まさに恋だなぁ。見た目以外、実はなんにも知らないのに。

主人公は気付いてない。自分とB子ちゃんとの方が、ずっと正常な人間関係を築いていることを。いい奴だなって感じられて、いざという時に助けを求められて、一緒に居て飽きない相手こそが、自分にとっての最良のパートナーたりえるのだ、ということに。気付いてない。そういうのは学生の時分には無理だよね。気づくわけがない。主人公が30越えてるオッサンだったらどうかと思うけど。

でも落ち着いて自分の心に耳をすませばちゃんと気がつくはずなんだけどね。A子ちゃんは可愛らしいけど、どこまで言ってもB子ちゃんの友達なんだ。主従はハッキリしてるんだ。

せつないなぁ。20年も前なら俺もこんな気持ちで過ごしてたかもしんないなぁ。「君の友達」は本当に名曲。俺のハロプロ楽曲大賞2010候補曲。しかもこの曲の返歌になってる「グランドでも廊下でも目立つ君」もこれまた最高。Berryz工房のアルバム『6th 雄叫びアルバム』は本当に稀に見る名盤だよなぁ。

もちろん、B子ちゃんが単純に空気が読めてないだけという可能性もある。主人公のそわそわした対応に全く気付かず、自分の気持ちを押し付けてくるだけのモンスター、ってことだって考えられる。でも俺はそんなことないって気がしてる。B子ちゃんは自分がA子ちゃんより可愛くないってこともわかってるし、自分よりA子ちゃんに気がありそうってことも気付いてる。それでも、自分の好きな人とコミュニケーションを取ろうと素直な気持ちでぶつかっていってるだけなんだ。だって好きなんだもん!

先日、アイドルを扱ってる芸能事務所の人と話をするチャンスがあったので、聞いてみたことがあるの。束ものアイドルには必ず、それこそ一般人レベルかさらにそれよりちょっと下ぐらいの見た目のコ……俺の呼ぶところの「ハズレ」が混じっているものですが、そのハズレちゃんは自分がハズレだということに気づいているものですか、って。前から聞きたかった質問をしてみたの。

そしたら、気づいてますよ、って。束ものアイドルのメンバーは、自分が他のメンバーと比べてどのくらい人気があるのか、とても敏感に気づいていますって。でもそういうのを自分の力で乗り越えて、卑屈になったりハスにかまえたりしないで、真正面からアイドルとして輝こうとするからこそ在籍し続けられるんですって。それができないコは続かないでやめていってしまう。だから、物怖じせずに輝こうと頑張ってる「ハズレ」には必ずファンがつくのだそうです。なるほどなぁと。長年の疑問が解消した瞬間でした。
やっぱり女の子はすごいよね。それに比べて男はバカだなぁ。ホントにバカです。