傀儡音楽

かいらいおんがく

つんく♂が使うところのアーメン

なぜなの 教会のいちばん後ろの席に
ひとりぼっちで座らせておいて
二人の幸せ見せるなんて
ひと言 いってもいいかな くたばっちまえ アーメン
(ウェディング・ベル/シュガー)

30年以上前、可愛らしい声のハーモニーから「くたばっちまえ」への落差、そんで「アーメン」で締める流れが秀逸で今でもよく覚えてます。でも「アーメン」がキリスト教への冒涜だなんつってちょっと物議を醸し出したんだよねたしか。

30年も前だと横文字至上主義というか、アメリカの文化をまねることがイコールかっこいい……という風潮がまだまだ残ってたから、キリスト教に信心があろうとなかろうと、やっぱり「アーメン」は格好良かったんですよね。歌の最後を「南無妙法蓮華経」とか「南無阿弥陀仏」とかで締めるのは生々しいもの。キリスト教自体が自分たちの文化と関わりの薄いものだったから、自分がキリスト教信者じゃないから、ほんの少しおとぎ話っぽいニュアンスで「アーメン」って使ってたと思うんです。まあ、言葉は悪いけど面白がってたんだろうね。

子供の頃テレビで流れる映画の中にも、外国人のセリフが「アーメン」で締められることはなんとなく多かった気がする。もちろん「なんまんだぶなんまんだぶ」とかで締められるセリフも多かったんだろうけど、「アーメン」の方がキャッチーな感じがしたんだよね。「祈りのセリフじみた言い方」だったらアーメンで締めた方が面白い、的な。

ほかに面白がってた例で言えばドリフターズあたりがネタで使ってたと思うんだけど、実際には全然思い出せない。思い出せないけど、「行け!稲中卓球部」で前野が言ってた「アーメン」は、たぶんドリフへのオマージュな気がするので、たぶんドリフでも使ってたと思う(無茶苦茶な断定)。ちなみにあのアーメンから冷や麦への流れは最高だったな。「アーメンソーメンヒヤソーメン」って志村のギャグだったかな?

2013年の現在になっちゃうと、宗教に関連したネタはかなりアンタッチャブルになっちゃって、ネタっぽくアーメンを使う場面もほとんど見かけなくなってますよね……なんて思ってたらスマイレージさんがやってくれました。

OH MY GOD!
憧れのこれが恋愛の行く末?
NO!
何か違う!
こんなはずじゃないよ
大人の途中
世の中バカなの
ヨノナカバカナノ
ヨノナカバカナノ
アーメン
(大人の途中/スマイレージ

「OH MY GOD!」ですら、実際には結構言葉としては「強め」な部類だと思うんですが、最後で「アーメン」と、かなり強気な仕上がり……な気がします。ぶっちゃけた話、NHKでは演奏しづらいのではないでしょうか。勝手な想像ですが。

俺はよくいるタイプの無宗教なオッサンなので、これを聞いても宗教への冒涜だなんて全然思わないし、最近のなんでもかんでもアンタッチャブルにしちゃおうっていう流れのほうが「ひとつの宗教に信心を示す=洗脳されている」みたいな無茶な決め付けに近づけてしまうようで嫌いなんです。でもこの曲でアーメンを出す必要があったのかな、とは思います。

だって……古いんだもん! アーメンて! 圧倒的に昭和! この曲の主人公の女の子が自分の恋愛に絶望するようなことがあっても、祈るような気持ちでアーメンとつぶやくこたぁないんじゃないか。あったとしてもその子は女の子って言うか昭和生まれだろ、って気がするんですよね。スマイレージちゃんにアーメンて歌わせるところは物凄く物凄い大事件なんですけども、それにしたって何の意味が、と思わず突っ込みたくなります。

でもまあ、これはつんく♂が、あまり宗教的な世界に肩入れせずに、昔の映画に出てきた祈りのシーンのオマージュ的にアーメン使ったらおもろいやろ、時代錯誤で、ぐらいの軽さで使ってきたんだとするとちょっと安心しちゃいますね。ほら、お米やら有機野菜やらにこだわったのが宗教の影響なんじゃないかとか、2011年の曲の歌詞が宗教の影響なんじゃないかとか、勘ぐる声もあったような気がするから。つんく♂はその辺ニュートラルというか、深く考えないでキリスト教のアーメンを使えちゃう軽さを持ち合わせてるってことの証拠のように感じちゃいました、っていう話でした。

……軽く使ってくれてて良かった、みたいな締めになっちゃいましたがホント俺も冒涜してるつもりはないので……。すみません。