傀儡音楽

かいらいおんがく

ミキティのセカンドを聴いた

 ハロープロジェクト期待の新人・藤本美貴の新曲を聴いた。俺としてはなかなか好きなのである。

そっと口づけて ギュッと抱きしめて
そっと口づけて ギュッと抱きしめて/藤本美貴 ¥1,020(税込)

 この「しちゃったんだろォィ」って発音がなんとも言えないネェ。ジェットコースター的とまではいかないけど、表現する感情がくるくると変わる、そのせわしなさがまさに若さを象徴するような抑揚の大きい曲である。つんく頑張ってます。

 ハロープロジェクトのソロ活動アイドルっつうことでどうしても松浦亜弥と比較せずには居られないし、実際比較してる人も多い。松浦が毎回ヘソを出してるとしたら、藤本美貴は肩出しルックで攻めてきてる。その幅の広いいかり肩を逆にチャームポイントにしようとしてる、といったところだろうか。

 なんというか、言い方は悪いが幸薄そうな、はじけ切れない呪いを背負った感じの女性である。松浦亜弥がどんなにはしゃいで見せてもその奥に「まだ限界じゃないです」っていう余裕があるのに対し、藤本美貴は前途洋々たる新人のはずにもかかわらずの切羽詰まった感。言い過ぎですか? 貧相というか。
 俺、こういう娘好きでさぁ……応援したくなっちゃうんだよねぇ。しかも愛称が「ミキティ」。誰がつけたか知らんがオイオイって感じじゃない? だからこそ俺はそう呼びたい。頑張れミキティ

 ミキティについては、久しぶりに友人TKと真っ向から意見が対立しちゃってさ。TKが言うには、ミキティは松浦の縮小再生産的扱いで、曲も松浦のボツ曲が周ってきている感じだ、と。その証拠に松浦の曲もミキティの曲も内容が同じじゃないか、と。本人たちのタイプが違うから松浦が派手にミキティが地味に見えるけれど、歌っている中身・世界観は一緒だって。

 でも俺は違うと思うんだよね。今作にしても前作「会えない長い日曜日」にしても、松浦の曲ならば必ずある「時代を切り取るガジェット」が存在しないんだよね。
 例えば今回の曲でも「電話のない夜は」という歌詞で伝えようとする内容を、携帯電話だのメールだのっていう時代を象徴するアイテムで伝えることは可能なはずなんだよね。(作詞作曲を担当する)つんくは、松浦の曲なら絶対それをしてくるはずだもん。
 ミキティの曲の場合最近っぽい編曲を除けば、ある意味20年前にあってもおかしくない内容……だと思うんだけどどうか。

 どう考えても、松浦とミキティの立場、あるいは人気の高さがひっくり返るような時代は来ない。一瞬たりともありえない。それがわかっていて、つんくミキティを投入しているんだと思う。松浦亜弥の存在のおかげで、ミキティがいかに正統派であるかはっきりと浮き彫りになる。
 正統派、王道であるということはすなわち面白みにかけるということ。特徴のない美人は受付嬢にはなれてもカリスマにはなれない。何一つ突出したところのないミキティが天下を取る日が来ないからこそ、順当で良質なアイドル歌謡曲をたくさん送り出して欲しいと思ってる、なんつーのは勝手過ぎるかね? ファンから抗議されちゃうかしら。

 俺、松浦亜弥の「曲」大好きだけど松浦亜弥自体への興味、全くない。でも引きつりながら頑張るミキティはちょっと応援したい。彼女にはそんな業の深さを感じるわけですハイ。