傀儡音楽

かいらいおんがく

リンダ3世が解散してしまった(解散してしまったアイドルの楽曲をステージでまた見る為には)

リンダ3世が解散してしまった。

TIFで観た5人のステージ。一生懸命に歌って踊る5人、ステージと客席が一体になって大きな声で応援して、笑顔がいっぱいで楽しかったな。あの雰囲気を味わうことはもうできない。あの熱量に立ち会うことはできない。アイドルグループの解散は突然に、そしてあまりに当たり前に訪れるものだからもう慣れっこなんだけど、やっぱり寂しい。

そして何より、リンダ3世の持っている名曲が歌い継がれていかないというのはあまりにも悲しい。アイドル歌謡曲をひとつの文化と捉えるならば、それは文化的損失だと思う。リンダ3世のオリジナルメンバーに歌い続けてもらうことはできなくなったけれど、リンダ3世の楽曲は誰かに歌い続けて欲しい。

最近は過去のアイドルの楽曲をカヴァーすることを主軸にしているアイドルグループもいるじゃないですか。すごく賢い、正しい選択だなと思ってるんですけど、じゃあリンダ3世の楽曲がそのアイドルの現場で聴けるかって言ったらわからないですよね。聴けても1曲2曲だし。

何年も活動していて定期的な集客人数もそこそこあるけれども、オリジナル楽曲は持ってない、デビューCDも発売していない、あっても2曲程度で、それ以外は過去のアイドルのカヴァー曲、っていうアイドルグループもたくさんいます。でもそこに、過去のアイドルの楽曲目当てで足を運んでるファンというのはいない、あるいは少ないんだろうな、と思います。

コピバンだな、と思いましたね。これからはコピーバンド的手法しかない、と思いました。

若い女の子たちの、アイドルになりたい、歌って踊って、人前でパフォーマンスしてたくさんの人に喜ばれたい、という欲求があるじゃないですか。それを満たすために、実は楽曲がオリジナルであるかどうかってあんまり関係ないですよね。だったら、楽曲を固定しちゃうんです。ひとつのアイドルに。完コピして、披露する。コピーが足りてなければ努力する。そうしてくれたら、コピー元のアイドルが好きな人/好きだった人は、そのアイドルの現場に足を運びやすいじゃないですか。私の好きなあの曲を、一生懸命再現してくれる新しいアイドルがいてくれる!

実際には完コピしているアイドルもいると思うんです。でもそれはたぶん、学生さんのコピーバンドと同じような同人的な、同好会的な集いなんじゃないかと想像しています。ではその子たちと、現在存在する無数のアイドルと何が違うのかって言えばたいして違わなくて、結局「そのアイドルで儲けてやろう」としているオジサンの存在があるかないか、じゃないかと思うんですね。「いつかはPerfumeNegiccoみたいにブレイクする可能性がある」みたいなことをメンバーたちに言い含めて、アイドルの頑張った結果を搾取しつくしてるんです、きっと。

ここで必要なのは、ハコなんじゃないかと思います。完コピのアイドルばっかりライブをやってくれるライブハウスがあって、ブッキングからカラオケの準備からステージ作りからモギリまでくれる。オーディションしてコピー具合をチェックしてくれる(レベルが低かったら出してもらえない)。著作権処理だのなんだのもまとめてやってくれる。ハコの運営は入場料と撮影会の売上等からまかなって、アイドルの子たちに「ちゃんとした」出演料を支払う。搾取し尽くしていない、1日バイトやりました程度の出演料をちゃんと支払う。そんなライブハウスがあったら……アイドルをやってみたいっていう女の子も、アイドルのステージを見に行きたいオジサンたちも、Win-Winなんじゃないかと思うんですね。

(そして、そのライブハウスの環境で、解散したアイドルのメンバーがある日一般人として勝手に集まって勝手にライブをしてくれたら……なんてことを考えるのもまた面白かったりして……)

……ってことを考えたんですけど、よく考えたらこんなん誰だって思いつくし、アイドルに限らずあまたのミュージシャンのコピーバンドでそのビジネスが成立していないんだから、この思い付きにはどっかにでっかい落とし穴があるんだろうな……。


アイドルを追いかけるってのが一瞬の輝きを追い続けるってことだから終わりはくるし、その亡霊を追ってCDを聞き続けるしかないんですけどね。イヤフォンの中には、今もまったく色褪せない大好きなアイドル楽曲がたくさんたくさんあるんです。

リンダ3世の完コピアイドルがいたら見たいなぁ。Berryz工房の、BON-BON BLANCOの完コピアイドルがあったら見に行きたい。彼女たちの曲で歌って踊っているアイドルが今も見られるならば、このイヤフォンの中の亡霊も、ちっとも物悲しい存在じゃなくなるのになぁ。