傀儡音楽

かいらいおんがく

ラブボディーという物語

昨日の「Girl’s BOX TV 〜夏祭り!! SPECIAL LIVE〜」で長澤奈央さんのラブボディーシリーズにも一区切りがついたようです。長澤奈央さんのファン以外にとって、このシリーズがいったいどんなものなのか知る由もないだろうと思われます。なのでここで今一度歌詞カードを紐解き振り返ってみようと思います。
まず、ラブボディーシリーズは全く違うメロディーによる7編の楽曲から成っています。

タイトル 発売日 収録方法
ラブボディー 2005/07/27 2ndシングルタイトル曲
ラブボディー2 2006/03/29 1stアルバム収録
ラブボディーIII 2006/09/13 4thシングルタイトル曲
ラブボディー for... 2006/12/06 5thシングルカップリング
ラウボディーVs 2007/03/21 ミニアルバム収録
ラブボディーRock! 2007/03/21 ミニアルバム収録
ラブボディー-SEVEN- 2007/03/21 ミニアルバム収録

ちなみに「〜-SEVEN-」の初お披露目は2007年1月8日のライブ「Girl’s BOX PREMIUM 01 "Re-Born"」。当時「Vs」も「Rock!」も発表されてなかった為、長澤奈央さんが「ラブボディー……」と充分にためた後、「……セブン」と発音した途端会場が大きくどよめいたことは今となっては伝説と言えるでしょう。
以下各作品のストーリーあらすじ。

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ラブボディー

主人公(ここでは仮にナオとする)は片思いの男性(ここでは仮にミヤコダとする)から「男女5対5ぐらいで海に行かないか」と誘われる。自分の気持ちを知りながら下心みえみえの誘いをしてきたミヤコダに対し怒るナオ。ナオは自分の肉体を磨きぬき、誰にも負けないプロポーションを作り上げた上で当日に望み、ターゲットのミヤコダの心を奪う。

ラブボディー2

あの夏の夜からしばらくが過ぎた。ナオは目論見通りミヤコダから自分に愛を告白させることに成功していたにもかかわらず、断っていた。努力して作り上げたボディーに自信があったからこそ、一回程度の告白でなびいてしまうのは「安売り」のように感じていたからだ。そしてミヤコダから、再度となる南の島へ向かうグループ旅行の誘い。応じるナオ。ミヤコダは前回の旅行でナオが別の男性からも告白されていることを知らなかった。

ラブボディーIII

ミヤコダはナオの心中が理解できず、ナオのことを諦めただけでなく、ナオの女友達(ここでは仮にアイコとする)とつきあい始めてしまった。愕然とするナオ。しかもアイコはナオに「彼氏(ミヤコダ)の男友達と私たちで、海に旅行に行かないか」ともちかける。アイコの行動は過日のミヤコダとそっくりだ。しかしアイコはナオとミヤコダに過去何があったのかを知らない。ナオは決心し、ミヤコダの本性を暴いてやることにする。三度目の海辺でもまた完璧なボディーを披露するナオ。その姿に見とれたミヤコダにアイコは幻滅し、二人はその日のうちに別れてしまう。しかもミヤコダは別れた直後、ナオに「やっぱりお前が最高だ」というメールを送りつけた。デリカシーの無さに呆れ果てるナオ。

ラブボディーfor...

季節は冬。夏の思い出がトラウマとなり、ナオはなかなか恋人を作れずにいた。早く理想の彼氏に出会いたい……出会いを求めたナオは雪山に出かける。もちろん肉体美は冬場であっても完璧に保っている。スノーボーダーには軟派な男が多いように感じたナオは、ターゲットをスキーヤーに絞る。めぼしい男性の前で転んで見せると思ったとおりに助けてくれた。意気投合して夕食の約束をするナオとスキーヤー。ナオは昼間と違う薄着でスタイルを見せつけ、勝負をかけるつもりだった。しかし夜を迎えるとスキーヤーが完全なナンパ師であったことがわかる。ふとした隙に別の女性を口説いているのだ。しかもスキーヤーの素顔は冬なのに日サロ焼けの、十人並みの見た目であった。もちろんその場でスキーヤーと訣別するナオ。一度は落胆するが、むしろ早期に手を引くことが良かったと気持ちを切り替える。

ラブボディーVs

季節は春。夏に向けてさらに肉体美にみがきをかけるナオ。短期決戦の急激なダイエットは身体にも心にも良くない。気を抜かず維持すること、それがナオの心の「戦い」なのだ。季節はすぐに移ろい夏が来る。海に行けば案の定、声をかけられるナオ。しかしそれがナオの運命を大きく変えていく。男はスカウトマンだった。ナオにグラビアアイドルにならないか、と言うのだ。戸惑うナオにしつこく勧誘をかけるスカウトマン。断り疲れたナオは了承してしまうが、すぐに気持ちを切り替える。どうせならトップアイドルになって世の中の人をトリコにしてやろうじゃないか。本当に一番になれたなら、その活躍を見たミヤコダを必ず後悔させられるはずだ。ナオは新しい道を歩き始める。

ラブボディーRock!

ナオのグラビアアイドルとしての活動も軌道に乗り、知名度も順調に上がっていた。本人としてもやりがいがあり、日々充実を感じている。そんなある日、ロケ地で撮影を行なっているナオに、突然現れたミヤコダが声をかけた。再会に驚き「偶然?」と尋ねるナオに「必然だ」と答えるミヤコダ。彼女が忘れられなかったミヤコダは必死にナオと再会する方法を探していたのだ。「ずっと愛している、今も忘れらない」と真摯に伝えるミヤコダ。「もう手遅れだ」と答えるナオ。しかしそのストレートな言葉、なりふりかまわず土下座までしてみせるミヤコダの一途な態度と想いに、ナオは心を動かす。そうだ、私がこのプロポーションを手に入れたのも、もともとは彼のおかげだったではないか。それからミヤコダは毎日連絡をして、気持ちを伝えてくる。まだ信じきってしまうことはできないが、ナオの心の扉は日に日に開きつつあった。

ラブボディー-SEVEN-

恋愛は難しい。見せかけだけの愛情はすぐに見抜けてしまう。女心は変わりやすいが、その機微を早く見抜いて欲しいという気持ちもある。男に必要なのは「尊敬できる存在であること」。女に必要なのは「優しさをきちんと伝えること」。相思相愛になれる相手と出会い直すために、この肉体を磨き続けてきたのかもしれない。再会し一からふたりやり直すことは、運命、宿命だったのだ。私の全てを大切にして欲しい。信じあえるあなたとなら、身を委ね、心を繋ぎあいたい。ナオは恋の再スタートに幸せを感じながら、そんなことを思っていた。

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片思いの相手を見返すために頑張るってところまではいいとして、頑張った結果グラビアアイドルになってそれなりに成功しちゃうって展開は完全に想定の範囲外でした。精神的な葛藤や現実に直面する苦難を全て「肉体を磨く」という行動で乗り切っていく姿が素敵です。第一作が世に出た時点では、まさかここまでになるとは、生みの親である都田和志氏も思っていなかったでしょう。
ちなみに二作目「ラブボディー2」にて「ラブボディー=愛体(あいたい)」という語呂合わせを思いついたらしく、以降七作目まで必ずどこかに「愛体」というワードが含まれます。結果、全作品収録のミニアルバムのタイトルが「愛体 LOVE BODY -SEASON I-」ですからね。シーズン1ってのが長澤奈央さんにとっての第一期という意味で、次からガラリと変わって始まるのが第二期であり、ラブボディーシーズンの第二期が始まるわけじゃない、と信じてますけど。
単なる連作ではなく、ひとつの物語を紡ぎ出す組曲として成立したのは、昨今のアイドルポップス界においてもそれなりにエポックメイキングな事件だとは思うのです。なのにいかんせん話題にならなかった理由は、長澤奈央さん本人の人気うんぬんというよりは、都田和志による楽曲がある一定のクオリティを保ちつつも、どうにもこうにもあるレベルを突き抜け切れなかったことによるもの……って気がしてます。まあ逆に都田和志一括管理の作品群でなかったら、今時珍しい連作っていう珍品にはならなかったのだろうな、とも思いますけど。
次なるシーズンを迎える長澤奈央さんの楽曲に期待ですね。一度都田から離れてみるのもいいと思うんですけどね……。Greenwich FieldsとかBOUNCEBACKとかどうですかねぇ。


以上、ラブボディーシリーズという物語。大団円おつかれさまでした。感動をありがとう!
愛体-SEASON I-(DVD付)
※こちらに補足を書きましたのであわせてお楽しみください。(07/8/19)
http://d.hatena.ne.jp/kairaiongaku/20070819/lovebody_plus