傀儡音楽

かいらいおんがく

あの頃、南野陽子は未来そのものだったよ

 わざわざビデオ録画してまで「うたばん」を観たよ。だってゲストに南野陽子が出るというじゃないか。そりゃあ観るさ。そんなの観るに決まってる!

 最近のヤングは知らないかもしれないけど、南野陽子っつったら俺らが高校生の頃のアイドル四天王の一人だったからね。
 あと三人は浅香唯中山美穂工藤静香。……もちろん四天王と名付けていたのは俺。でも実際に人気があった。四人ともニッポン放送で番組持ってたんだよ。南野陽子が「ナンノこれしき」、浅香唯が「少し大人のシルエット」、中山美穂が「ちょっとだけええかっこC」、工藤静香が「Yes,it's you」だ。ああ懐かしい。ちなみに俺が当時好きだったのは荻野目洋子だ。ニッポン放送のラジオ番組は「純情フリーウェイ」だ。

 一世を風靡した彼女ですから。今日録画してた三十代のオッサン多いと思うんだけど。わざわざ二代目スケバン刑事の衣装(コスプレ?)をさせられて登場した南野陽子は……おそろしく変わってなかったよ! 皺もなくてむしろ不自然なくらいに。でもそういう邪推の目にならなければ……「あの頃のまま」は言い過ぎでもそれに近い、決して37歳には見えないアイドルがそこにはおりましたよ。

 そして自分の視点のいやらしさに愕然とした。俺、最近アイドルを見る目が「ああ、今が一番いい時期かもなぁ」とか「あ、そろそろ下り坂かこのコも」みたいな見方をしちゃってるってことに気が付いた。何様だ俺!
 でもさ「あ、このコこれから伸びるよー、絶対売れちゃうよー、俺、結構前から目ぇつけてたもんね!」みたいに目を引くコって居るじゃない? そういうアイドルの未来をほんの少し想像して楽しむってのは悪くないよね。未来を楽しみにするってのは、悪くない。

 「うたばん」の企画がなんかスター誕生みたいな企画らしくて(初めて観たのです)。もう一度歌でデビューしたいと一生懸命歌う南野陽子の歌は全然上手になってなくて、むしろ当時のレコードよりも下手で、それがホントむしろ十代のアイドルそのままの風情で、おじさん胸を詰まらせてしまいました。南野陽子もひさしぶりの人前での歌(+オーディション扱いで)で、見ててはっきりわかるくらい緊張でふるえてて、スカウトの手が多数上がった後は涙ぐんで見せて、まさにアイドルって感じでした。見入ってしまった。素直に「がんばれ」とか思ってました。

 歌った曲が「吐息でネット」。南野陽子の曲で一番有名な曲ってこれかな? 「楽園のdoor」「話しかけたかった」「はいからさんが通る」どれも有名そうだけど……やっぱり「吐息でネット」って気がする。久しぶりに聞いたらいい曲だったよ。

 「吐息でネット」ってタイトルも素敵。岡田有希子は「くちびるネットワーク」なんて曲、歌ってたねぇ。当時インターネットはさすがに見当たらなかったけど、パソコン通信はさかんだったし、企業や大学はネットワークでどんどん繋がり始めてたんだよね、きっと。たぶん「ネット」とか「ネットワーク」っていう言葉に未来っぽさがあって、ベタ過ぎないロマンがあったんじゃないかなぁ。少なくとも今よりは。未来を楽しみにするってのは、悪くないよね。

 「吐息でネット」。「くちびるネットワーク」。いいね。いいタイトルだね。ロマンがある。ネットって言葉を使うといいのかもなぁ。

 えっ? 『outernet』? ……うーん。

GOLDEN☆BEST/南野陽子 ナンノ・シングルス3+マイ・フェイバリット
GOLDEN☆BEST/南野陽子 ナンノ・シングルス3+マイ・フェイバリット ¥2,831 (税込)