傀儡音楽

かいらいおんがく

松浦亜弥のめちゃホリを観る

 ここのところ理屈っぽいことばかり書いていたためか(いつもだけどね)、風邪を引いてしまった。布団の中からこんにちは。こんなときLOOXS君が役に立つというものである。

 どうやら熱があるらしく、布団の中は熱気のカーニバルだ。流れる滝のような汗はまさに真夏の我慢大会。常夏の島気分である。
 ということで強引だが、夏気分全開、松浦亜弥の「yeah! めっちゃホリディ」のビデオクリップを観た感想でも。

 前回の「桃色片想い」に関しては酷評した俺である。あんなサビのみの曲は俺は大嫌いなのだ。で、今回の「めちゃホリ」はどうなのか、というと……全くオッケーである。「ドキラブ」「トロ恋」の流れを汲んだ、これがサードシングルですと説明されたら納得させられてしまいそうな、松浦真骨頂という感じの曲である。

 ビデオクリップもまさに、という作り。まるで「トロ恋」に出てきたテレビでテニスを観ている主人公の、次の日の絵日記のような映像。良い意味で変わっていない、特に成長した感じもない本当に地続きな印象のクリップである。

 本当に松浦には破綻というものがない。全てが調和しているので、気を抜いていればこれほど安心して見ていられるアイドルもいないし、邪推を始めればその完璧さのため不安がつきまとう。なんというか「やらされている感」が微塵もないんだよね。

 このビデオクリップにはモーニング娘。の「恋のダンスサイト」とのいくつかの相似性が指摘できるんだけど、モーニングのビデオに明らかな「無理を求められて頑張ってます」的なある種の居心地の悪さがあるのに対し、松浦側にそういうのが一切感じられないんだよね。このビデオでこうやって笑い歌い踊るためだけに存在しているような気がするのだ、松浦は。
 モーニングのビデオならば撮影し終わった後の感想や、あるいは愚痴がメンバーから聞けそうなものじゃない? それが透けて見えることこそが、舞台裏の素人っぷりをギリギリまで明かす異形のアイドル・モーニング娘。の価値なんだけど。
 でも松浦にはそれがない。ビデオの撮影が終わった瞬間、ハツラツと「おつかれさまです!」と言った松浦は、そのまま電源が切れてスリープモードに入ってしまうんじゃないか、なんて想像をしてしまうほどに。

 ビデオの中では、ファッション雑誌を眺める私生活風の松浦と、歌い踊るチャイナ服やヘソ出し衣装の松浦が交互に映される。だが私生活風の松浦もビデオ開始1分かそこらで同じ踊りを始めてしまうのだ。明確な区別がない。ハレとケのないシームレスな感じ。「アイドル松浦」でない「人間松浦」が存在するのか、心配してしまうのである(余計なお世話だが)。

Yeah! めっちゃホリディ
Yeah! めっちゃホリディ/松浦亜弥 ¥1,020(税込)


 「すんげぇ、すんげぇ」と文字で見せられると酷く抵抗があって、ぶっちゃけ長渕剛が「なりてぇ、なりてぇ、チンピラになりてぇ」と歌っていたのを思い出してしまう。ところが曲の中で歌われるとちっとも違和感がないんだよね。逆にいい感じ。
 「ちょびっと」を「ちょっぴと」と発音するところや、「アイ・ユメ・ドットドット・スラッシュ」という無意味にインターネット的な呪文も、松浦ワールドのお家芸として屈服せざるを得ない。

 ただし、今回も「フインキ」同様苦言を言わせてもらえるならば、「ホリディ」の発音は「ホリヂー」に近いはずで「ホリデイ」とは読まない。小さいイの字を使うと本物英語度が上がると勘違いして、デスクトップパソコンをディスクトップパソコンと書いてしまい、皿の上に置くのかよとつっこまれてしまうダイエーのチラシと似たようなもんである。料理じゃないんだから。アツアツのパソコンを召し上がれ、なんつって。

 アツアツ。暑い。この布団の中はまるで南国だ。朦朧として、何を書いてるかよくわからない。「松浦はアイドルサイボーグ」みたいなことを書いてて、読者が「またその結論かよ!」とお怒りじゃなければいいんだけど……。

長渕剛の歌詞は、「なりてぇ」ではなく「泣いて」でした。そりゃそうだ! 曲名が「泣いてチンピラ」だし。ご指摘くださいましたぐぅこさん、ありがとうございました!